PASMOとクレジットカード、沿線ビジネスの関係とは――東京急行電鉄
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Interview:
PASMOとクレジットカード、沿線ビジネスの関係とは――東京急行電鉄 (1/2)
3月18日からスタートする交通乗車券「PASMO」。中心となる私鉄7社のスタンスはまちまちだが、東急グループではPASMOを軸とする関連ビジネスの広がりに期待しているという。東急にとって、PASMOはどのような位置づけであり、狙いがあるのか聞いた。
2007年03月16日 16時36分 更新
3月18日、首都圏の私鉄・バス各社が新たなIC乗車券/電子マネーシステム「PASMO」を導入する(3月16日の記事参照)。すでに本誌でも度々取りあげているとおり、PASMOはSuicaと相互乗り入れを実現し、首都圏の公共交通をシームレスに接続。さらにPASMOは電子マネーとしてもSuicaと相互利用が可能で、対応店舗が私鉄およびJR東日本沿線に広がることになる。これにより、レールサイドに巨大なPASMO= Suica経済圏が誕生することになる。
今日の時事日想は特別編として、PASMO導入事業者の1社であり、PASMO電子マネー加盟店開拓事業も手がける東京急行のインタビューをお送りする。東京急行電鉄情報コミュニケーション事業部事業企画部主幹の土屋智永氏に、東急グループにとってのPASMOの位置づけ、ビジネス的な狙いや戦略について聞いていく。
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PASMOのビジネス的な狙い
PASMOは大きく2つの役割を持っている。1つは鉄道・バス向けのIC乗車券システムであり、もう1つが電子マネーだ。この構成はJR東日本の Suicaを始め、公共交通系のFeliCaサービスで多く見られるものである。ビジネス的な狙いも、IC乗車券システムと電子マネーではそれぞれ異なる。
「(PASMO導入の)IC乗車券システムの狙いとしては、私鉄・バスの公共交通の利便性向上、駅改札の運用効率向上などが挙げられます。例えば、従来型の磁気カードでは自動改札機のトラブルが発生しやすく、渋谷駅ぐらいの規模になると改札機故障が絶えません。PASMOは非接触ICですから、読み取りスピードが速く、さらに可動部のトラブルがない。
また、当然ながら自動改札機など役務機器のメンテナンスコスト削減効果が見込めます。自動改札が紙詰まりなどのトラブルを起こせば、保守要員の派遣などをしなければならず、こういった費用は馬鹿になりません」(土屋氏)
ほかにもチャージをすることで繰り返し使えるFeliCaカードは、使い捨ての磁気式のプリペイドカードや定期券、切符に比べて「環境に優しいという大きなメリットもある」(土屋氏)。
しかしその一方、シビアな見方をすれば、これらIC乗車券システムの導入メリットは、私鉄・バス会社の事業を大きく拡大するものではないと、土屋氏は話す。
「東急をはじめとする大手私鉄各社の中で期待の声が大きいのは、PASMOを1つの(様々なサービスの)プラットフォームとして、関連事業を開発していくというものです。これはJR東日本がSuicaを拡大した手法ではありますが、歴史的に見れば、私鉄の方が鉄道事業を軸にした関連ビジネスの開発を多く行ってきました」(土屋氏)
PASMOをプラットフォームとして、様々な関連事業を開発・連携させていく。その重要な鍵になるのがPASMO電子マネーであり、現時点では、小田急電鉄、京浜急行電鉄、西武鉄道、東京急行鉄道、東京地下鉄、東京都交通局、東武鉄道の7事業者が加盟店の開拓を行い、PASMO電子マネーを使った周辺ビジネスの拡大に注力している。
PASMO電子マネーは地域密着で広がる
ここでPASMO電子マネーの加盟店開拓および手数料収入のスキームを整理しておこう。
PASMO電子マネーも他のFeliCa決済やクレジットカードビジネスと同様に、加盟店からの手数料収入がある。しかし、その仕組みは少し変わっている。具体的には、PASMO電子マネーでは加盟店から支払われる手数料にカードイシュアの取り分はなく、アクワイアラ(加盟店開拓事業者)のみに手数料収入が入ることになるのだ。また、これはJR東日本のSuica電子マネーとの相互利用でも同じスキームになっている。
例えば、東急が開拓したPASMO電子マネーの加盟店で、他の私鉄会社が発行したPASMOカードやSuicaの電子マネーが使われた場合、加盟店からの手数料収入が入るのは東急だけということになる。逆に東急が発行したPASMOカードの電子マネーが、他の私鉄会社が開拓したPASMO電子マネー加盟店やSuica電子マネー加盟店で使われた場合は、東急側に手数料収入がない。つまり、PASMO電子マネーとSuica電子マネーのビジネスでは、まずは「どれだけ加盟店開拓ができるか」が重要な争点になるのだ。
ay_kamio_04.gif 東急電鉄など私鉄7社は、オレンジ色の「アクワイアラ」に当たる。エンドユーザーがどこが発行したPASMOを使おうと関係なく、自社が開拓・契約した加盟店からのみ、PASMO電子マネーの手数料を受け取れる仕組み
では、PASMO電子マネーの加盟店開拓に、東急そして私鉄各社はどのような姿勢で臨むのだろうか。
「東急としては、まず駅ナカビジネスなど駅施設の商業利用に積極的な考えを持っており、ここでのPASMO電子マネー対応拡大を進めます。さらに、(東急では)たまプラーザや二子玉川、自由が丘、大岡山などの再開発事業を手がけていますので、これらの地域で駅と駅周辺のPASMO電子マネー対応を進めます。
また、これは東急ならではと言えるのかもしれませんが、(路線の)地元商店街との連携を重視したいと考えています。例えば、目黒区や世田谷区の商店街でのPASMO電子マネー導入では、ポイント連携という形で我々が支援させていただくことになっています。こういった地域密着型の取り組みは、私鉄と JR東日本との違いになります」(土屋氏)
電子マネーの加盟店開拓では、JR東日本はイオングループと提携するなど、大手のナショナルチェーンとの関係を深めている。一方で、東急は「我々は地元と一体的に成長してきたという思いがある。地域との共存共栄を目指す」(土屋氏)という姿勢だ。PASMO電子マネーを推す事業者の中には、沿線のまち作りへの関わりで温度差もあるが、この部分がSuicaとの違いになっていることは間違いないだろう。
PASMOとポイントビジネスの連携
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PASMOとクレジットカード、沿線ビジネスの関係とは――東京急行電鉄 (2/2)
2007年03月16日 16時36分 更新
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PASMOとポイントビジネスの連携
3月18日に向けて、PASMOは利用促進キャンペーンの真っ最中だが、そこで大手私鉄各社が大々的に訴求しているのが、自社クレジットカードと連携させた「オートチャージ機能」だ(3月16日の記事参照)。また、私鉄各社はクレジットカードのポイントプログラムとPASMOの連携も盛んに訴えており、「ハウスカード+PASMO」での普及を図ろうとしている。
ay_tokyu_03.jpg TOKYUポイントのPASMOチャージ機。1000ポイント単位でPASMOへチャージできる
この姿勢は東急も同様だ。東急グループのクレジットカード会社である東急カードでは、自社の「TOP&」カードとPASMOを紐づけてオートチャージ機能を提供し、チャージごとにTOKYUポイントを付与する。また、貯まったTOKYUポイントを1000ポイント単位でPASMOの電子マネーとしてチャージする機能を用意。東急が開拓したPASMO電子マネー加盟店の一部ではTOKYUポイントが付く場合もあるという。このように、オートチャージとTOKYUポイントの両方で、PASMOとの連携を行っている。
「(PASMOへの)TOKYUポイントの付与や還元により、グループの施設及び沿線が消費誘発される効果に期待しています。特にグループの(流通・サービスなどの)リテール事業が潤うことを考えています。
さらに今回、(オートチャージやポイントなど)PASMOとの連携をすることで、東急カードを会員のメーンカード化したいと考えています。 PASMOが単体で使われるだけですと収益拡大の点で限界がありますから、(PASMOがきっかけになって)TOP&のクレジットカード機能の利用促進される方が我々のビジネスへの効果が大きい」(土屋氏)
現在、TOKYUポイントの会員数は、クレジットカードだけで143万人、現金カードが78万人になる。PASMOへのチャージでポイントがつくのはクレジットカードのみだが、TOKYUポイントからPASMOへのチャージはクレジットカードと現金カードのどちらでも可能になる。なお、東急では TOKYUポイントからPASMOへの専用チャージ機を沿線主要28駅に設置する予定だ。
「クレジットカードとしては、東急カードは私鉄系ハウスカードで最大規模です。東急ではこれまでTOKYUポイントを沿線で貯める、使うという形で(ポイントによる)沿線消費誘発を行ってきたのですが、ここに(TOKYUポイントから)PASMO電子マネーへのチャージを加えることでTOKYUポイントの魅力を拡大します」(土屋氏)
ay_tokyu_02.jpg TOP&カードにはさまざまな種類がある。写真はJALとの提携カード
PASMO向けのポイントサービスは各社でスタンスが異なり、小田急電鉄や東京メトロ(東京地下鉄)などは電車に乗るだけでポイントが貯まる乗車ポイントサービスを提供している。一方、東急は今のところTOKYUポイントからPASMO電子マネーへの交換をメインにしており、乗車ポイントのようなサービスは投入しない。
「我々も乗車ポイントの検討をしていますが、東急は通勤・通学路線の色合いが強く、『ポイントが付くから(電車に)乗る』という形で乗客が増えるとは考えにくい。鉄道のビジネスに乗車ポイントのような仕組みが有効か疑問が残ります。一方で、TOKYUポイントは東急グループを中心に約500社の加盟店があり、すでにポイントが貯めやすい環境ができている。当面はTOKYUポイントからPASMO電子マネーへの交換で、お客様にも十分な利便性があると考えています」(土屋氏)
東急はTOKYUポイントとPASMOを連携させることで、沿線ビジネスの囲い込みと拡大、私鉄随一であるクレジットカード事業のさらなる活性化を狙う。さらに「(TOKYUポイントの)事務局にはお客様の利用履歴がマーケティングデータとして蓄積されますので、今後はデータベースマーケティングにも力を入れていく」(土屋氏)という。
まずは一体型カード。関連ビジネスの開発にも積極姿勢
PASMOは3月18日からいよいよスタートするが、東急では「TOP&カードからのオートチャージ利用者を、早期に10万人まで増やしたい」(土屋氏)という目標を持っているという。さらに機能向上やサービスの拡充にも前向きな姿勢だ。
「まず、三井住友カードと提携したPASMO/iD共用端末による加盟店獲得を本格化したいと考えています(2006年11月の記事参照)。また時期は申し上げられませんが、TOP&カードとPASMOの一体型カードも発行します。
一方でおサイフケータイへの対応ですが、こちらは開発投資がかかるものですから、PASMO全体としても課題として捉えています。現状では対応の予定はありませんが、取り組むべき課題という認識です」(土屋氏)
東急では、PASMOを使った新サービスの開発にも積極的だ。同社のグループ会社である東急セキュリティが、今年4月からPASMOを使った子ども向けの「キッズセキュリティ」サービスを投入する。このサービスではPASMOカードを認証に使い、学校や学習塾への到着を保護者や教職員にメールで通知する機能を提供する。サービス開始当初は自動改札機通過による連絡機能はないが、イメージ的にはPiTaPaを使った立命館小学校の事例に近い(2006年7月の記事参照)。
「まずは学校や塾向けのセキュリティですが、東急セキュリティは住宅やオフィス向けのセキュリティサービスも手がけています。今後、PASMOを使ったセキュリティはさらに広げていきたい」(土屋氏)
PASMOはSuicaと相互利用を実現することで、世界最大のIC乗車券/電子マネーインフラとして注目されている。しかし、それ以上に重要なのは、私鉄各社のポイントプログラムや関連事業に今後どれだけ活用されていくかという部分だろう。東急の取り組みだけ見ても、その裾野の広がりや様々な新ビジネスの登場に大きな期待が持てる。
PASMOを導入する大手私鉄各社、それにSuicaを育ててきたJR東日本が、どのように切磋琢磨していくか。もうすぐ始まるPASMOの今後に、注目である。
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