マネー 連載第2回 かしこい「パスモ」使いこなし術
首都圏では3月半ばよりPASMO(パスモ)の利用が開始されました。
PASMOは、これ1枚で地下鉄、私鉄、JR、バスなど交通機関の乗り降りがワンタッチでできるものです。電子マネー機能もついているので、読み取り機械の置いてあるお店でのショッピングにもお財布代わりに使えるというものです。
よく似たICカードにJRのSUICAが存在しましたが、PASMOとSUICAの読み取り端末が統一されたことにより、SUICAでもPASMOでも地下鉄、私鉄、バスなどほぼ全ての首都圏の交通機関がワンタッチ乗車が可能となりました。
カード1枚で全てすむ時代にはなりましたが、一方で、以前から存在する回数券やバス共通カードなど、その利用価値が再度認識される機会でもあります。PASMOの主要特徴を見ながらそのあたり、概括したいと思います。
■オートチャージ
クレジットカードであれば、使いすぎで利用の差し止めが発生するまで使い放題(そんな状況になると破産まっしぐらですが…)ですので、気軽に利用できますが、電子マネーやICカードで面倒なのは、カード残額が少なくなるたびに入金作業が発生することです。カードを入手したもののついチャージが面倒でカードを利用しなくなったという人も結構多いのではないでしょうか?
PASMOの場合は、クレジットカード型のものに申し込むと、PASMOの残高がある一定以下になると自動的にクレジットカードからPASMOに入金(チャージ)される機能がついているので、入金の必要がなくなります。そして、オートチャージごとにクレジットカードの利用金額が増えていき、その分クレジットカード側で利用ポイントがつくので、お得です。
最近は電話やインターネット接続などの通信費、それに公共料金など毎月発生する費用をなるべくクレジットカード払いにして、カードのポイントを貯めようという人が増えていますが、それが電車の運賃の支払にも利用できることになったことを意味します。
オートチャージ機能だけを取ってみるとSUICAでもView Cardと一体型になっているものに関してはついており、PASMOだから目新しいというわけではありませんが、PASMOの方がたくさんの種類のクレジットカードが選べるので利便性は高まったと言えます。ちなみに、Edyでも同様にクレジットカードタイプにはオートチャージ機能がありますが、ご存知の通り交通機関では利用できません。
なお、オートチャージ機能はあくまでクレジットカードとの一体型PASMOに搭載されるものであり、駅などで購入した通常のPASMOにあとからオートチャージ機能を搭載することはできません。クレジットカード型PASMOは申し込んでから手元に届くまで4週間ほどかかりますので、待ちの期間が発生してしまいます。
一方で、オートチャージ機能は便利なのですが、入金作業がない分、一体自分がいくらを使っているのかが分からなくなり、つい使いすぎてしまうという懸念もあります。そんな場合はオートチャージ機能のみの解約をしたくなりますが、それはできず、クレジットカードの解約をして初めてオートチャージ機能も解約となります。この場合は、もともとはクレジットカード型のPASMOだったものが、普通のPASMOカードになるということです。
また、オートチャージは、地下鉄や私鉄の改札を通るときのみに行われるもので、電子マネーとして使う店舗では行われません。ちょっとした買い物をするときに、得意げにPASMOを使ってみたら、残額が足らず、しかもオートチャージもされずに恥ずかしい思いをすることになるので、注意が必要です。
■モバイル対応
SUICAにはモバイルSUICAが存在し、お財布携帯としての利用も可能ですが、PASMOでは、当面はお財布携帯への対応はありません。ゆえに、携帯対応という面ではSUICAに一日の長があり、全てを携帯で済ませたいという方にはSUICAの方が良いということになります。
■首都圏以外での利用
なお、首都圏以外の地域への出張が多い方にとってもSUICAの方が利便性は高いと思われます。それは、SUICAは首都圏のみならず仙台など東北エリアでも使えますし、東海地方ではJR東海のTOICA、関西地方ではJR西日本のICOCAと相互利用が可能です。つまり、SUICA1枚あれば、JRの利用に関しては日本の主要地域での利用が可能です。
■バスでも使えるが…
PASMOは都バスや私鉄系のバスの利用も可能ですが、これらバスに関してはもともとバス共通カードというものが発行されています。1,000円、 3,000円、5,000円のカードがありますが、それぞれの利用可能額は1,100円、3,360円、5,850円とお得なのです。
PASMOでバスを利用する際もこのお得度合いを引き継いでいます。例えばPASMOで1,000円分バスを利用すれば100円分のバス利用チケットがもらえるという仕組みです。
ただし、PASMOでの利用の場合は、1か月間の利用金額に対応してチケットがもらえる仕組みであり、1か月経つと利用金額がリセットされてしまいます。よって、たまにしかバスを利用しない人にとっては、バス共通カードには有効期限がありませんので、そちらの方がお得になります。
■再度見直されるメトロ回数券
お得なバス共通カードで思い出されるのは、地下鉄メトロの回数券です。
メトロカードの場合は、1,000円カードでの利用可能額は1,000円とお得さはなかったのですが、回数券なら1,600円で1,760円分の利用が可能です。いくらPASMOのオートチャージ機能を使いまくってクレジットカードでポイントを貯めたとしても、お得度合いでは10%もお得な回数券の方が上回ります。また、回数券の場合は、時差回数券(平日10時~16時と土日のみ利用可)、土日回数券(その名のとおり土日のみ利用可能)というものもあり、それぞれ1,600円で1,920円分、2,240円分利用可能であり、そのお得度合いは圧倒的です。
ただ、回数券の場合は、購入するときの券の額面は1種類ですので、160円券の回数券を持っている人が190円区間に乗車する場合は乗り越し清算が必要になります。友達と一緒に行動しているときに、みんなはPASMOでスイスイ改札しているのに、自分だけ「ちょっと待って、精算するから」ではカッコ悪いものです。
もちろん190円券や230円券の回数券も存在しますので、両方使い分ければいいのですが、毎回の乗車時にいくらかかるかを確認し回数券を使い分けるのは面倒ということもあるでしょう。またお財布に異なる金額の回数券をたくさん入れておくのは、お財布が太ってしまい不便です。
メトロ(地下鉄)の乗車金額は、乗車キロ数によって決まっており、6キロまでが160円区間です。だいたい駅4つぐらいです。そこで、1つの案としては、おそらく最もよく利用する160円の回数券のみ購入しておき、数駅の距離の利用では迷わず160円の回数券を使います。そして、ちょっと長めの距離を利用するときにはPASMOを利用します。
これだと精算の必要もないですし回数券のお得さとPASMOの利便性の両方を享受することが可能です。もちろん回数券は使い切ったら、再度切符売り場で購入しないといけませんので、その手間はかかりますが、10%お得というのは見逃せません。実際私はこの利用術で地下鉄を利用しています。
■SUICA、PASMOの2枚同時利用は不可能
お財布にSUICAとPASMOの2枚を入れて改札を通ろうとすると、改札機が混乱してしまいピンポーンと改札で捕まってしまう可能性があります。
これに対応するために、ある会社からは定期入れの表面と裏面にSUICAとPASMOの2枚を別々に収納できるものが発売されたりしていますが、そもそも SUICAとPASMOの両方を持つ必要性はあまり高くなく(定期券の都合で2枚持たざるを得ない場合はあるかと思いますが)、両方持つためにわざわざ定期入れまで購入するということになると単に出費だけがかさんでしまいます。利用シーンに合わせてどちらか1枚のカードを選ぶことをお奨めします。
■SUICAからPASMOへの乗り換えを希望する場合
SUICAもPASMOも最初にカードを取得する際にはデポジットとして500円の支払いが必要です。
これは、補償料みたいなもので、カードを紛失すると戻ってきませんが、カードの利用を中止して返却すれば戻ってきます。
SUICAからPASMOに乗り換えるためにSUICAカードを返却する場合は、みどりの窓口での対応となります。ただ、ここで1つ注意が必要なのは、カードに残額がある場合、その残額は精算されません。例えば294円の残額があるSUICAを返却する場合、デポジットの500円は戻ってきますが、 294円は戻ってこないのです。ゆえに、乗り換え&カード返却を希望される場合は、カード残額を使いきってからにしてくださいね。
■ショッピングではまだまだEdyが強い
交通機関でのワンタッチ乗車はできないものの、電子マネーではEdyが以前から存在しており、店舗での読み取り機設置台数の面では大きく先行しています。またEdyは利用金額に応じてANAのマイレージが貯まりますので、この点は実はPASMOよりもSUICAよりも魅力的です。
■1枚で全て対応可能にはなったが
ということで、私の場合は、交通機関の利用に関しては以前から使っていたSUICAと160円券のメトロ回数券、バスの利用では引き続きバス共通カード、ショッピングではEdyとを使い分けているのが現状です。若干面倒ではありますが、これが今の段階では一番お得ではないかなと思います。
SUICAもPASMOもまだ持っていなくて迷っている方は、携帯利用、首都圏以外での利用、そしてオートチャージによるクレジットカードのポイントの3つの視点で、自分にとってはどれが一番便利かを見極めることをお奨めします。
保田隆明
経済・金融分野の柔らか解説(テレビ番組、書籍・コラム執筆)、各種アドバイザーとして、企業の財務戦略・M&Aなどを解説。また、金融業界とインターネット業界の両方に在籍した経験から、ネットとリアルの融合、金融とネット・ITの融合、そしてビジネストレンドについても実践解説。