「本業の裏」にある 電子マネーの本当の姿
全国展開を実現している電子マネーは、実はビットワレットの「Edy」だけではない。JCBの「QUICPay」がある。主婦層への浸透・拡大という観点からすると「Edy」のそれと比べるのは難があるかもしれないが、利用可能範囲という側面では、しっかりと47都道府県に「商圏」を築きつつある――。
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「QUICPay」が全国展開されやすかった背景
「Edy」と同様に「全国制覇」をすでに成し遂げている電子マネー、「QUICPay」。クレジットカードとひもづいた「ポストペイ」方式を採用しているため、東日本旅客鉄道の「Suica」、PASMO協議会/パスモの「PASMO」、セブン&アイ・ホールディングスの「nanaco」、イオンの「WAON」といったほかの電子マネーとは使い勝手や利用シーンなどにおいてやや比較しづらい側面もあるが、小額決済市場を狙った電子決済であるという点では同一視できなくもない。
ただ、ジェーシービー(JCB)が電子マネーを手掛ける理由は、あくまでも「クレジットカードという本業の補完としての位置付けでしかない」(JCB市場開発本部QUICPay統括室専任マネージャーの吉田敦史氏)ということがある。
「Suica」「PASMO」「nanaco」「WAON」は、それぞれ鉄道あるいは流通という本業を持つ会社によって提供されているサービスである。小額決済というのはそもそも収益を生み出すのが非常に難しい市場となるため、それだけでビジネスにするのはそうたやすくない。従って、どの電子マネーも、「本業を活性化させるため」といった補完的な側面で手掛けられているのが実情だ。JCBもまた、「QUICPay」を多用してもらうことで、クレジットカード利用が活発になることを狙っている。
JCBの場合、クレジットカードとしてのインフラが整っていた(全国に加盟店があった)(※1)ため、全国制覇への道のりはそれほど険しいものではなかった。JCBカードの加盟店を中心に導入を進め、現在全国で4万店を数えるまでになっている。「『QUICPay』をオープン規格とし、どのクレジットカードでも使えるようにしている」(吉田氏)ことも、利用可能店舗拡大に貢献しているという。
もちろん、加盟店ばかりが増えているわけではない。「加盟店と会員を交互に増やすように慎重に進めた」と、吉田氏は語る。
クレジットカードの補完としての存在
「QUICPay」はもともと、社員証に決済機能を加えた「offica」(オフィカ、03年2月発売)が基になっている。社員食堂など社内での利用時に社員証で決済できるようにしたICカードだ。もちろん、ポストペイ方式である。
吉田氏によると、「offica」の利用にもポイントを付与するようにしたところ、クレジットカード利用が増えたという。こうした状況から、小額決済がクレジットカード利用の動機付けになると判断。2004年7月に「QUICPay」を開発した。そして、試験導入を経て、地道に普及させてきた。
ただ、その広がりは決して勢いがあったものとはいえなかった。「QUICPay」はJCB以外のクレジットサービスでも使える電子決済機能なのだが、その存在すら知っている人は少なかった。
そんな「QUICPayに転機が訪れたのは2006年。同年4月にトヨタファイナンスが採用し、半年後に本格展開に踏み切ったり、同年夏以降、「Edy」や「Suica」などとの共用リーダー/ライターが発表された。またJCB自身もテレビCMを打つようになった。そうしたことが奏功し、会員数が一挙に増えたのである。トヨタファイナンスだけですでに、優に100万人を超えている。
トヨタファイナンスの力はかなりのもののようだ。東海地区――とりわけ名古屋駅周辺――では「『QUICPay』以外の加盟店の方が少ないという状況になっている」(吉田氏)というのである。ちなみに、名古屋駅そばにはトヨタファイナンスの名古屋本社がある。
吉田氏によると、JCBカードにおいては、「QUICPay」保有者のクレジットカードの年間利用額が2倍になっているとか。このように、優良顧客のランクに上がってくる顧客が増えているという。
「QUICPay」という電子マネーは、あくまでも「クレジットカードの補完」として位置付けられながら利用領域の拡大を図っているというのが実際の姿である。その上で、JCBは「高額商品についてはクレジットカードを使ってもらいたい」(吉田氏)と考えている。これは何も、「QUICPay」だけにいえることではない。「Suica」も「PASMO」も「nanaco」も「WAON」も……だ。唯一、「Edy」だけが異なる立場にいるといっていいのかもしれない。