定期券収入が堅調、雇用改善進めば電鉄各社の業績下支え要因に
水野 文也記者
http://www.asahi.com/business/reuters/RTR200803280130.html
[東京 28日 ロイター] 電鉄各社の定期券収入が堅調に推移している。沿線部でのマンションなど開発による乗客増加に加え、雇用環境の改善がその要因として大きいとの見方が多い。雇用改善が一段と進めば電鉄会社の業績を下支えするとの期待もある。
ただ、足元の雇用改善に足踏みが見られるほか、不動産事業に不透明感が強くなっており、全体的には楽観視できない状況だ。
年度替りで新入社員がいよいよ社会人生活のスタートを切るが、現在の就職事情は売り手市場と言われるほど好調が目立つ。厚生労働省と文部科学省がまとめた2月1日の07年度大学等卒業予定者の就職内定状況によると、大学の就職内定率が88.7%と前年同期を1.0ポイント上回った。また、新卒者のみではなく、パート社員の正社員化など、社会全般で雇用環境の改善が注目されており「社会全体での正社員の増加は定期券の需要増加につながり、その恩恵を電鉄会社が受けている」(岡地証券・投資情報室長の森裕恭氏)という。
実際、ある電鉄会社関係者は「少子化の影響を受ける通学のほか、地方の定期券収入は厳しいが、沿線の宅地・マンション開発や景気上向きなどによる労働人口の増加で通勤定期は好調となっている」と話す。クレディ・スイス証券・アナリストの板崎王亮氏は「首都圏の私鉄では、PASMOの導入効果も大きいが、それを差し引いても各社の定期券収入は実質的に前年比1%程度の伸びは確保できる」と指摘している。
大和総研・アナリストの一柳創氏は「雇用が増加すれば、電鉄会社に最もダイレクトに反映されるのが定期券収入。雇用改善を増加の理由としてみるのは自然だ」とコメントしていた。
個別では、JR東日本<9020.T>の好調が際立つ。2月まで年度累計の定期券収入は、新幹線は前年同期比0.1%減と伸び悩んだものの、在来線については同7.3%増と高い伸びを記録している。これについて同社の広報担当者は「PASMOの相互利用効果も見逃せないが、全体としては景気好調が理由として考えられる。とりわけ、昨年3月に常磐線にグリーン車を導入した効果が大きい」と述べた。
JR東海<9022.T>では、第3四半期までの累計で新幹線が同4.4%増、在来線が同1.6%増、JR西日本<9021.T>は同じく新幹線が同3.2%増、在来線が同0.2%増となった。また、都市部に路線が集中する東京急行電鉄<9005.T>は同2.9%増を記録。関西でも、阪急阪神ホールディングス<9042.T>の通勤定期は、阪急が同0.2%増、阪神が同1.4%増となっている。
全国的に人口減少が懸念される中で、今後も首都圏については増加が見込まれ、関東の電鉄会社は環境が急激に悪化する様子はない。しかし、28日に発表された2月の完全失業率(季節調整値)は3.9%となり前月比で上昇、昨年10月(3.9%)以来の高水準となり、総務省が「足元、雇用改善に足踏みが見られる」との判断を踏襲したうえで「今後の動きを注視する」とするなど、不安も生じている。
また「雇用改善のほか、ガソリン価格の上昇による自動車から鉄道へのシフト期待など、鉄道事業の環境は良好だが、市況の急激な悪化で各社とも不動産事業が足を引っ張るリスクも出ている」(三菱UFJ証券・アナリストの姫野良太氏)といった指摘もあり、手放しては全体の収益見通しについて楽観できない。
さらに「JRで見ても、東日本と西日本で数値が大きく異なるように、路線のある地域によって差が生じていることに注意したい」(クレディ・スイス証券の板崎氏)という。
2月都道府県別の有効求人倍率(季節調整値)が1.87倍で最も高い愛知県を地盤にする名古屋鉄道<9048.T>は、第3四半期までの定期券収入が前年同期とほぼ同じとなったほか、東武鉄道<9001.T>が前年同期比0.6%増。営業距離で私鉄最大の近畿日本鉄道<9041.T>は、08年3月期通期の定期券収入見通しが前年比2.1%減を見込んでいるなど、都市部に展開する私鉄でも地方路線を抱える企業は伸びていない。今後は地域差も各社の収益動向をみる上で注目点となりそうだ。
(ロイター日本語ニュース 編集 宮崎 亜巳)