自動改札を通るときにかざすRFIDタグ・カードの,アンテナ部の周波数特性を確認する.(編集部)
皆さんが首都圏の鉄道に乗る際に利用できるSUICAやPASMOでおなじみのRFID(Radio Frequency Identification)タグ・カードは,接触型ICカードや磁気カードとは異なり,13MHz帯の電磁結合を利用した非接触カードです.簡単にいうと,電源トランスなどと同じ,電磁結合タイプのトランスとなります(図1).
http://www.kumikomi.net/article/explanation/2009/05mea5/01.html
図1(1) データを送受信するための仕組み
● 13.5MHzで共振するRFIDタグ・カード
RFIDタグ・カードは写真1のようにいろいろな形状があります.どのカードも配線パターンで生成したコイルと,配線パターンで生成したコンデンサ,ICの入力容量,パッケージの浮遊容量で13.5MHzの共振をさせています.
写真1 13MHz帯を利用して信号を送受するRFIDタグ・カードの例
このカードのテストには,電波を利用した433MHz帯や940MHz帯,2.5GHz帯のRFIDタグ・カードと少し異なった測定法を用います.ちなみに電波は距離の2乗に反比例して通信感度が低下しますが,磁気結合は距離の3乗に反比例して通信感度が低下します.従って,通信距離は10cm位が実用範囲です.以下,13MHzの電磁結合を利用したRFIDタグ・カードの,共振周波数の測定方法について説明します.
● コイルを結合させてエネルギやデータをやりとりする
通常,2.45GHzの電波を利用したRFIDタグ・カード(ISO18000-4)は,1/4λ(30mm)のアンテナとしてのパターンを使用します.しかし,13MHz帯は1/4λの長さが5.77mにもなりますから,名刺大の小さなカード上にはアンテナ・パターンが引けません.そこで,コンデンサを追加してLC共振回路を構成します.この回路は別名タンク回路とも呼ばれ,エネルギを吸収するように動作します.
このタンク回路のコイルに発振器のコイルを結合させると,発振器のエネルギが吸収されます.昔,通信機のタンク回路の共振周波数を測定する時に使用されたグリッド・ディップ・メータが,この原理と同じになります.RFIDタグ・カードは,このエネルギを整流してカードICの電源としています.
● 共振点はスペクトラム・アナライザで測定する
測定にはトラッキング・ジェネレータ付きのスペクトラム・アナライザを使用します.
治具として,写真2のような10cm/2tのコイルを使用します.BNCコネクタのコモンを共通にして,コイルの両端をBNCのしん線にはんだ付けします.
写真2 筆者の製作した測定用アンテナ
トラッキング・ジェネレータ付きスペクトラム・アナライザへの接続について説明します.BNCの片側はトラッキング・ジェネレータからの信号を入力し,反対側をスペクトラム・アナライザの入力に接続します.ちょうどS21測定と同じ接続になります.
コイルは,共振点が測定周波数の13MHzより十分に高い周波数になるように作成します.このときの伝送特性を図2に示します.共振点は63MHzと十分に高い周波数となっています.また,20MHz付近にRFIDタグ・カードの共振点が観測されます.
図2 測定用アンテナの共振点と,RFIDタグ・カードの共振点
アンテナのみの測定であるため,アンテナの共振点は20MHz.
測定系全体のセットアップを写真3に示します.アンテナは変換コネクタで直接,スペクトラム・アナライザに接続しています.その上にカード・ホルダを載せ,その上にRFIDタグ・カードを載せて測定しています.
写真3 実際に測定している様子
● シミュレーションで特性を確認する
図3にシミュレーションによる特性を示します.左上のグラフが周波数特性です.図2に示した実機による測定結果とよく似た特性が,シミュレーションできているのが分かります.このように電磁界シミュレータによるシミュレーションでパターン形状を確認しておくことが,製品の短期開発や試作コスト削減に効果的です.
図3 電磁界シミュレータによる共振点のシミュレーション結果
Microwave Office(米国Applied Wave Research社)を利用
図2の共振点を拡大したものが図4です.測定に用いたRFIDタグ・カードはICが実装されていないため,20MHzと高い周波数で共振していますが,ICが実装されるとICの容量分によって13.5MHzの実際の使用周波数になります.このときパッケージの浮遊容量も共振周波数を低くしてしまいます.複数の誤差要因を考慮し,最終製品で13.5MHzにしなければならない点が,この製品の難しいところです.
図4 RFIDタグ・カードの共振点
参考・引用*文献
(1)* 非接触ICカード技術方式「Felica」,ソニー(株).
http://www.sony.co.jp/Products/felica/pdf/data/FeliCa_J.pdf
つの・とおる 横河電気(株)
<筆者プロフィール>
津野 徹.1971年,東海大学通信工学科卒業.1976年,安藤電気計測技術部にて特注測定器の設計に従事.1981年,KENWOOD測定事業部にてオシロスコープの設計に従事.1996年,横河電機にてアナログ半導体テスタの高速高周波モジュールの設計に従事.1998年,横河デザインエンジニアリングにて特注回路設計制作に従事.1999年から横河マニュファクチャアリングにて横河電機技術部のサポート中.