Edy加盟店獲得が一段落し黒字化にメド、2010年施行の資金決済法も追い風
ビットワレット 眞鍋マリオ代表取締役社長
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Interview/20090815/335513/
「電子マネー元年」といわれた2007年から2年が経過した。当時、セブン-イレブン・ジャパンのnanaco(ナナコ)やイオンのWAON(ワオン)、関東私鉄連合のPASMO(パスモ)など、電子マネーの新規参入が相次いだ。それから2年間、一貫して、電子マネーの加盟店や利用者は増加した。
電子マネーEdy(エディ)を運営するビットワレット(東京都品川区)は2001年に参入した業界のパイオニアだが、創業以来赤字が続いている。同社はほかの電子マネー事業者のように公共交通機関や小売店舗を自ら持たないため、Edyの加盟店開拓に苦心してきた。
しかし、2009年秋までに日本マクドナルドやセブン-イレブン全店でEdyが使えるようになる。加盟店獲得が一段落し、同社の事業は大きく前進する。ビットワレットの眞鍋マリオ代表取締役社長(写真1)に、現状と今後の戦略について聞いた。(聞き手は、清嶋 直樹=日経情報ストラテジー)
コンビニエンスストア大手の中で唯一Edyを採用せず、独自の電子マネーnanaco(ナナコ)だけに対応してきたセブン-イレブンが2009年10月から全店でEdyを導入する。
当社としては、Edyを導入してもらえるようにずっとお願いしていた。7年越しでようやく実現した。やっとコンビニ大手全社でEdy導入が実現したことで、社内は大いに盛り上がっている。
電子マネーを効率化のツールと考えていただいたことが導入の決め手だったと思う。電子マネー利用率が上がれば、釣り銭の受け渡しが無くなり、繁忙時のレジ処理効率アップにつながるからだ。電子マネーの普及が進み、オフィス街のコンビニでは来店客の8~9割が電子マネーを利用する店舗も出てきている。
セブン-イレブンのフランチャイズ加盟店オーナーから電子マネー利用率をもっと上げたいという声が多く上がっていたとも聞いている。(セブン-イレブンでnanacoしか使えない現状よりも)利用率を上げられることが、Edy導入の決め手だったのだろう。
加盟店獲得は一段落、黒字化のメドは立ちつつある
現在の電子マネー市場をどのように見ているか。
Edyの利用可能個所数は2009年8月1日時点で14万9000カ所に上る。日本マクドナルド全店(約3700店)への導入は2009年8月末までにほぼ完了する。同年10月にはセブン-イレブンの約1万2000店が加わる。大手チェーンへの導入は一段落しつつある状況だ。加盟店数は飽和に近づいているのに対して、利用者側にはまだ拡大の余地がある。2009年7月の月間利用件数は約2600万件で過去最高だったが、もっと伸ばせるはずだ。
Edy事業はまだ利益を出せていない(ビットワレットの業績は2009年3月期まで9期連続で赤字)。黒字化の見通しは。
今期(2010年3月期)は赤字を見込むが、来期か、遅くともその次の期には黒字化できるメドが立ちつつある。利用拡大策と並行して、2008年から大幅なコスト削減活動を進めてきたからだ。
電子マネーに対する一般の認知度が高まったこともあり、当社から能動的に営業活動をしなくても、「待ちの営業」で十分になっている。これに伴い、加盟店向けの営業体制を大幅に縮小し、ピーク時の半分の人員で回すようにした。さらに、サーバーの集約などによって情報システムの運用費用を従来の3分の2に減らした。
電子マネー決済以外の収益源は育っているのか。
2009年6月から「成果報酬型店舗送客プログラム」を始めた。第1弾は、HOYAヘルスケア(東京都新宿区)が運営するコンタクトレンズ専門店「アイシティ」の販促で、ネット広告を見て登録後に来店し、1万円以上購入した顧客に2000円分のEdyを還元する仕組みだ(8月31日までの期間限定の予定)。ネット上でよく使われている成果報酬型の「アフィリエイト広告」のリアル店舗版だ。
不景気の影響もあって広告宣伝費の費用対効果が厳しく問われるようになっている。広告掲示から来店・購買までの流れを追跡したうえで、成果が出た分だけ広告費を支払うサービスには一定の需要がある。
一方で、2007年6月に始めた類似サービスの「Edyスマイルクーポン」は2009年3月にサービス終了した。Edy加盟店でしか使えないという制約があり、利用者への認知も進まなかった。新サービスはまだ試行錯誤の段階で、すぐに収入の柱になるとは考えていない。
「エコポイント」は新規利用拡大に生かす
写真2●Edyカード(左)と、EdyギフトIDのカード(右)。16文字の英数字でEdyを受け取れる仕組みを「エコポイント」交換にも利用している
[画像のクリックで拡大表示]政府が景気対策として始めた「エコポイント」はEdyにどのような影響があるのか。
エコポイントをEdyに交換する申請を2009年7月1日から受け付けている。これには、同年3月から始めたばかりの「EdyギフトID」というサービスの仕組みを流用している。ギフトの送り主(この場合は政府の「グリーン家電エコポイント事務局」)から受取人にID(16文字の英数字)を知らせるだけで、Edyを「送金」できる仕組みだ(写真2)。
Edyカード(発行枚数約4000万枚)や、簡単な操作でEdyが使えるようになるフェリカ(おサイフケータイ)機能付きの携帯電話(販売台数約6000万台)を持っている人の中に、まだEdyを使っていない人がたくさんいる。エコポイントをEdyに交換してもらうことで、こうした層が新たにEdyを使ってくれることを期待している。
電子マネーを規制する「資金決済に関する法律(資金決済法)」が2009年6月に国会で可決・成立し、2010年に施行される。
これはEdyにとっては追い風になる。(従来は規制が緩かったウェブマネーやビットキャッシュなどの)サーバー型電子マネーが、ICチップ型のEdyと新法の下では同じ条件で規制を受けるからだ。新法を機に、店頭での決済に加えて、ネット通販やゲーム・音楽などコンテンツ販売での決済をさらに推進させたい。既にEdyに対応するウェブサイトは8200以上あり、ほかのICチップ型電子マネーと比べてもEdyは優位に立てる。
(清嶋 直樹=日経情報ストラテジー) [2009/08/20]